過去問解説!【電験二種1次試験(理論)<R2:問4>】〜過渡現象をラプラス変換で解く〜

過去問【電験二種1次試験(理論)<R2:問4>】過渡現象の問題をラプラス変換を用いて解いていきます。
※参考文献は以下の通りです。
問題【電験二種 1次試験(理論)<R2:問4>】


解説
(1)
スイッチを閉じた時以降の\(t\)≧0の微分方程式考える。
問題の回路より、
\(E=ri(t)+v(t)\)
ここで\(i(t)=\displaystyle \frac{dq(t)}{dt}\)なので
\(E=r\displaystyle \frac{dq(t)}{dt}+v(t)\)
また、静電容量の公式\(q(t)=Cv(t)\)より、
\(E=rC\displaystyle \frac{dv(t)}{dt}+v(t)\)・・・(A)
となる。
【答え】(1)・・・(ニ)
(2)
(1)で求めた(A)式をラプラス変換すると、
\(E=rC\displaystyle \frac{dv(t)}{dt}+v(t)\)・・・(A)
\(\displaystyle \frac{E}{s}=rC(sV(s)-v(0))+V(s)\)
題意より、\(v(0)=0\)なので
\(\displaystyle \frac{E}{s}=rCsV(s)+V(s)\)
整理すると
\(V(s)=\displaystyle \frac{E}{s} \times \displaystyle \frac{1}{rCs+1} \)
\(s\)についている\(rC\)を取ると、
\(V(s)=\displaystyle \frac{E}{rC} \times \displaystyle \frac{1}{s} \times \displaystyle \frac{1}{s+\frac{1}{rC} } \)
次に部分分数分解をすると、
\(V(s)=\displaystyle \frac{E}{rC} (\displaystyle \frac{1}{s} – \displaystyle \frac{1}{s+\frac{1}{rC} }) \times rC\)
\(V(s)=E (\displaystyle \frac{1}{s} – \displaystyle \frac{1}{s+\frac{1}{rC} }) \)
これを逆ラプラス変換すると、
\(v(t)=E(1-e^{ -\frac{t}{rC}})\)・・・(B)
となり、時定数\(\tau\)は
\(\tau=rC\)
【答え】(2)・・・(ヌ)
(3)
\(v(t)\)の式は(2)で求めた(B)式であるので、
\(v(t)=E(1-e^{ -\frac{t}{\tau}})\)・・・(B)
題意より\(v(0)=0\)、
\(v(\infty)\)は(B)式より
\(v(\infty)=E(1-e^{ -\frac{1}{\tau}\times\infty})\)
\(v(\infty)=E(1-0)=E\)
よってこれら\(v(0)=0\)、\(v(\infty)=E\)を(B)式に当てはめると
\(v(t)=v(\infty)(1-e^{ -\frac{t}{\tau}})\)・・・(C)
となる。
※問題文①の式に\(v(0)e^{ -\frac{t}{\tau}}\)の表記があるが\(v(0)=0\)なので無視でよい。
【答え】(3)・・・(ロ)
(4)
題意より、(3)で求めた(C)式を使って\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}\)を求める。
\(t=T\)、\(t=2T\)をそれぞれ(C)式に代入すると
\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}=\displaystyle \frac{v(\infty)(1-e^{ -\frac{2T}{\tau}})}{v(\infty)(1-e^{ -\frac{T}{\tau}})}\)
\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}=\displaystyle \frac{1-e^{ -\frac{2T}{\tau}}}{1-e^{ -\frac{T}{\tau}}}\)
この分子を因数分解すると、
\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}=\displaystyle \frac{(1+e^{ -\frac{T}{\tau}})(1-e^{ -\frac{T}{\tau}})}{1-e^{ -\frac{T}{\tau}}}\)
よって
\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}=(1+e^{ -\frac{T}{\tau}})\)・・・(D)
【答え】(4)・・・(ト)
(5)
題意より(4)で求めた(D)式より\(e^{ -\frac{T}{\tau}}\)を求めると
\(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}=(1+e^{ -\frac{T}{\tau}})\)・・・(D)
\(e^{ -\frac{T}{\tau}}=\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}-1\)
となり、(3)で求めた(C)式にこれを代入すると
\(v(t)=v(\infty)(1-e^{ -\frac{T}{\tau}})\)・・・(C)
\(v(t)=v(\infty)(1-(\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)}-1))\)
\(v(t)=v(\infty)(2-\displaystyle \frac{V(2T)}{V(T)})\)
となる。
【答え】(5)・・・(カ)
所感
過去問【電験二種(理論)<R2:問4>】過渡現象をラプラス変換で解きました。
この問題は以下の3つがポイントです。
- ラプラス変換の公式が暗記できているか
- 微分方程式において、\(i(t)\)を静電容量の公式\(q(t)=Cv(t)\)から\(v(t)\)まで変換できるか
- 因数分解が必要と気づけるか
いずれも電験二種受験者にとっては必要事項なのでしっかりと理解しておきましょう。
本問は電流\(i(t)\)の過渡現象ではなく、電圧\(v(t)\)の過渡現象の問題です。なので、微分方程式\(i(t)\)を静電容量の公式\(q(t)=Cv(t)\)から\(v(t)\)まで変換できるかがとても重要です。変換に使う公式は基礎的な物ですが「\(i(t)\)→\(v(t)\)に変換が必要!」と瞬時に認識するにはそれなりの過去問対策が必要です。
個人的に難しいと思ったのが因数分解の箇所です。これはヒラメキが必要と思います(笑)数学が苦手な自分は初見では解けない問題でした。これも問題集を繰り返し勉強する事で解法の引き出しを増やす事が最適な対策だと思います。
また自身の感想になってしまうのですが、(3)の問題については問題制作者の意図と異なった解法となったと思います。問題文の6行目に「電圧\(v(\infty)\)が〜〜〜不明であっても〜〜\(V(T)、V(2T)\)から求められることを示す。」と記載があります。なので\(v(\infty)=E\)と求めてしまうのは間違っているのかもしれません・・・。
しかし!本問は選択問題!マークシートに正しい解にマーキングできてれば良いのです!
と開き直りも必要かなぁと思う朝でした。
以上、参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!